認知バイアスとは
認知バイアスの定義を調べる
「認知バイアス」という言葉があります。あちこちで聞きますが正しく理解しておきたいのでいろいろと調べてみました。
野村證券の証券用語解説集から
まずは、野村證券の証券用語解説集に出ていました。(証券用語でもあるのですね)
認知バイアス|証券用語解説集|野村證券直観や先入観、自らの願望やこれまでの経験、他人からの影響によって論理的な思考が妨げられ、不合理な判断や選択をしてしまう心理現象のこと。
https://www.nomura.co.jp/terms/japan/ni/A02740.html
「認知バイアス」の定義としてはこのくらい簡単で良いかなと思います。
行動ファイナンスにおける認知バイアスには、最初に提示された特定の情報を偏重して投資判断をしてしまう「アンカリング」や、投資家が利益を得るよりも損失の回避を優先する傾向があることなどを示す「プロスペクト理論」、投資の継続が損失の拡大につながると分かっていても、これまでの投資を惜しんで投資がやめられない「コンコルド効果」などが挙げられる。
https://www.nomura.co.jp/terms/japan/ni/A02740.html
証券用語としては、この「アンカリング」「プロスペクト理論」「コンコルド効果」などあるようですが今回は触れません。
人工知能学会の本田先生の記事から
【記事更新】私のブックマーク「認知バイアス・ヒューリスティック:意思決定科学から見る人間らしさ」 – 人工知能学会 (The Japanese Society for Artificial Intelligence)この記事の前半で「判断・意思決定時に人間が見せる認知バイアスについて」として「認知バイアス」について定義づけされています。
人間が論理的に考えて無矛盾な意思決定を行なっているか否か(e.g., 二つの選択肢のうち好きな方を一つ選ぶという意思決定において,選択肢A・Bが提示された場合はBを選び,選択肢B・Cが提示された場合にCを選ぶならば,選択肢A・Cが提示された場合にCを選ぶという推移律を満たした意思決定を行う),あるいは確率論から考えられる規範的な解答と一致した判断を行なっているか否か(e.g., 事象A, Bがあり,確率的にはAのほうが発生する確率が高い場合,人間も事象Aが起こりやすいだろう,と判断する),こういった視点から人間の判断や意思決定の合理性が分析されます.そして,もし論理や確率論から逸脱するような現象が観察された場合,それは人間が見せる非合理的な判断や意思決定と考え,またそのような判断や意思決定は認知バイアスと呼ばれます.
https://www.ai-gakkai.or.jp/resource/my-bookmark/my-bookmark_vol34-no3/
ここで論理や確率論が出てきます。いわゆる主観的でなく客観的なデータに基づいた判断や意思決定にそぐわない場合が「認知バイアス」と言えるでしょうか。
認知バイアスの研究
「認知バイアス」は、先の本田先生の記事にもありますが、
認知バイアスに関する研究は, D. Kahneman [1]とA. Tversky [2],2人の心理学者が牽引してきました.特にD. Kahnemanは一連の研究が評価され,2002年にノーベル経済学賞を受賞しました(A. Tverskyは1996年に亡なったために,受賞できませんでしたが,存命していればKahnemanと一緒に受賞しただろうと言われています).
https://www.ai-gakkai.or.jp/resource/my-bookmark/my-bookmark_vol34-no3/
という2人の研究者が牽引してきたようです。
Daniel Kahneman – WikipediaAmos Tversky – Wikipediaその主たる論文は、「Thinking, Fast and Slow」として知られています。
Thinking, Fast and Slow – Wikipedia日本語訳も出ています。
留意点として,近年,心理学研究における再現性についてしばしば議論になりますが,この本で取り上げられているいくつかの研究についても再現性が疑問視されています.Kahnemanも妥当性があまり高くない研究に対して信頼を置きすぎたことを認めているようです.詳細はこのページ[4]を参照のこと
https://www.ai-gakkai.or.jp/resource/my-bookmark/my-bookmark_vol34-no3/
との留意点も記載されていますので、興味のある方は以下をご参照ください。
“I placed too much faith in underpowered studies:” Nobel Prize winner admits mistakes – Retraction Watch具体例で見ていこう
さて結構難しくなってしまいそうなので具体例を見ていきましょう。
YouTubeでわかりやすく解説されている
まずは動画でわかりやすく解説されているこちらから。
Webから『【心理学】認知バイアスとは? 事例や種類一覧、対策を紹介|「マイナビウーマン」』
こちらは認知バイアスの簡単な紹介になっており時間のない方におすすめです。
【心理学】認知バイアスとは? 事例や種類一覧、対策を紹介|「マイナビウーマン」具体的には、「認知バイアスに支配されないための対策」として4項目あげています。
- 認知バイアスがあることを自覚する
- 判断を保留にする
- 違う考え方に耳を傾ける
- 数値データを収集する
さらに「認知バイアスの自覚が、指向の偏りを防ぐ最大のポイント」としています。
先の定義でも「客観的なデータに基づいた判断や意思決定」と書きましたが、ここでも「数値データを収集する」とデータの重要性が謳われています。
Webから『成功の障壁となる5つの認知バイアス | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)』
ここでも認知バイアスのいくつかを説明しています。
成功の障壁となる5つの認知バイアス | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)ここで示されている5つは以下のとおりです。
- 利用可能性バイアス
利用可能性バイアスは人が自然と「頭で理解しやすい情報」に偏りがちになる傾向のこと
https://forbesjapan.com/articles/detail/44490
- 現状維持バイアス
「思ったほどうまくいかないかもしれない」、「仕入れ先に拒絶されるだろう」といった考えから、リスクを避けようとプロジェクトを打ち切る。これが、現状維持バイアスだ。人は、損失のリスクを犯すよりも現状の維持を好む。
https://forbesjapan.com/articles/detail/44490
- 自己中心性バイアス
自己中心性バイアスとは、他者の視点よりも自分の視点に重点を置く傾向のこと。ビジネスでは、リーダーに自己中心性バイアスが働くことで、自分の視点を裏付けるデータの方に注目し、自分の意見に反するデータを軽視してしまう。
https://forbesjapan.com/articles/detail/44490/2/1/1
- 感情ヒューリスティックバイアス
このバイアスは、人が強く激しい感情的反応に注目する傾向のことだ。人は不安を掻き立てる情報やデータを見ると、それに対処する行動を取る可能性が高くなる。一方で、感情に訴えかけないデータは無視しがちだ。
https://forbesjapan.com/articles/detail/44490/2/1/1
- 自信過剰バイアス
「人は、自分が状況を正しく判断している可能性を過大評価し、自分が間違っている可能性を過小評価する」
https://forbesjapan.com/articles/detail/44490/2/1/1
ここでは、データを重視する際のリスクとして「自己中心性バイアス」について触れられています。ここにあるようにデータを重視しても、自分の都合の良いデータにだけ着目してはいけないのです。客観的なデータ活用が必要な理由はそこにあるのです。
どんな「認知バイアス」があるか知る
認知バイアスといってもここまで見ただけでもいろんな種類があります。
このたくさんの認知バイアスについてまとめたのが次のサイトです。
認知バイアスとは | 錯思コレクション100このサイトでは、「記憶」「意思決定・信念」「他者・自己」の3カテゴリーに分類して100種類以上の認知バイアスが説明されています。一度俯瞰してみると良いかもしれません。
書籍
Amazonの書評や中身を見た結果、以下の2冊をお奨めします。
まとめ
認知バイアスは、認知バイアスがあるということを認識することが大事で、まずはそこからです。
自分は大丈夫などということはなく、データによって自分の判断が正しいかどうかしっかりと見極める必要があるでしょう。そのデータについてもフォーブスで書かれている「自己中心性バイアス」にきをつける必要があります。
より良い判断と意思決定のために認知バイアスを正しく認識していきたいものです。